五月蠅い

 

すごく、傷付いている。

ひとりで勝手に傷付いている。

 

わけがわからないけれど、ひとりで、勝手に。

 

 

帰ってきたらポストにぎゅうっと無理矢理詰め込んだみたいに封筒が入ってた。

頼んでいた可愛いお気に入りの絵柄の包装紙だった。

 

悲しくなった。

 

久しぶりに隣人が大きい声で話して笑って叫んで騒いでいる。

ぼーっとしていたら上からもドンドンドンドン騒がしい足音。

反対側の隣人もガタガタ音を立てて、五月蠅い。

若い女の子の甲高い笑い声。扉を開けたり閉めたり。

足音。足音。足音。声。声。声。

五月蠅い。

 

自分が何か言われたわけでもされたわけでも無いのに

勝手にもやもやで胸を詰まらせて

傷付いて

何で私がくるしいんだって腹を立てて

傷付いてる。

 

なんでそんなこと言うの。

聞きたくない。聞きたくない。

聞こえないように、わあーー!!!!!って

大きい声で叫びたくなった。

 

誰かを踏んずけて

自分を良く見せようとするような声が

大嫌いだ。

それを黙って聞いていることに

私は勝手にふかく傷ついてしまう。

腹を立てている自分に

いちいち傷付いている。

 

ああ、五月蠅い。

 

だれかの大事なものを

だれかが大事にしない。

 

”ありがとうございます!”

って可愛い字で書いた封筒を

届けてくれた誰かはぐしゃぐしゃにして平気にもう忘れてる。

 

誰に頼まれたわけでもないのに

ひとりで腹を立てて傷付いて

ひとりで。ひとりで。ひとりで。

 

勝手にばかにして

勝手に踏んづけて

勝手に笑って

勝手に忘れて

 

みんなみんな自分勝手。

 

みんなみんなひとりで。

 

聞きたくないのに。