まよなかのおはなし

 

 

雨降りのおとを聴いているまよなか。

 

ねむれなくなりました。

 

だからたからばこに仕舞っているおはなしたち、

みたいなことを話そうと思います。

 

ひとつは

10個、歳の離れたふたりのデートのはなし。

お父さんとお母さんがまだお父さんとお母さんじゃなかった頃のはなし。

船に乗って、旅行かな。

ともかくデートをしていて

歳も離れているんだけど

おぼこいお母さんと、おっちゃんっていう感じのお父さん。

旅先の知らない人に

「娘さんとおでかけですか?いいですねえ。」

と言われてしまって

「嫁や」

って、お父さんが言ったっていうエピソード。

私はこのおはなしが大好きなんだー。

思い浮かべると、愛おしくて笑っちゃう。

だけど本当に船なのか

どうして船なのか?

いつこんなおはなしを聴いたのか。

私の記憶は曖昧で、

どこまでが本当なのか、わからない。

そのときの写真を見せてもらったって記憶してるけど

それも本当かわからない。

でも、私はそれを見たように感じていて

それが”本当”とか”嘘”とかって

とるにたらないことだなって思う。

「事実」だけが本当とは限らないし

そもそも”本当”なんて本当の意味でおはなしにできることなんて

ひとつもないのだもの。

 

小説の「きいろいゾウ」で

ムコさんとツマさんが駆け落ちした電車のなかで

心細いきもちだったふたりの前で

酔っ払いのおっちゃんが

「グッドナイト、グッドナイトベイビー

涙こらえて

今夜はこのまま

おやすみグッドナイト

グッドナイト、グッドナイトベイビー

涙こらえて

楽しい 明日を 夢見てグッドナイト」

って歌っていたというエピソード。

これも大好きなおはなし。

この小説でこの曲を知って、大好きになった。

こんなうたを

酔っ払いのおっちゃんの鼻歌で聴けたふたりは

きっととてもあんしんだっただろうなあって。

こもりうたみたいにやさしく響くうた。

大人もみんな、こもりうたを必要としてる。

みんなあかちゃんだったんだもん。

そして大人みたいに振舞って、またあかちゃんみたいな

素直さをみつけていくんだ。

私はふたりじゃないけれど

もちろんこれは小説の中のできごとで

なのに目の前で起きていたことみたいな記憶。

ほんとうに、とるにたらないことだ。

 

学生の頃

ある同級生の男の子が、わたしのこと

「今日かわいかったーーーー!!!」

って自転車漕ぎながら言ってくれたっていうエピソードは

同級生の誰かから聞いて

それはもう、とびきり嬉しかった。

だからたからばこにとっている、ひとつの大好きなエピソード。

このおはなしだって

私は直接見たわけでもなく、誰かから聞いた話で、

記憶の中で何かがすり替わっているかもしれないし

どこまで本当のことかわからない。

ただ、その話を聞いたときに、とっても嬉しいきもちになったことは憶えていて

そんなことが自分に起きたことが

とってもたからものになったんだ。

 

その男の子と喋った記憶は

教室でふらふらひとりで歩いてた私に

突然男の子が配っていたお土産のお菓子を

私にもくれたこと。

そのときのことはなぜだかよく覚えていて

それ以外にお喋りをした記憶がほとんど無い。

 

あの頃私はまだまだ人見知りが克服できてなくて

特に男の子とお喋りするのが苦手で

緊張しちゃってすぐ顔が赤くなってたなあ。

 

私はいつも自分でいっぱいいっぱいで

全然、彼のことも知らなかった。

 

8年前の彼のことは、たぶんあんまり知らないままだったけど

8年ぶりの彼と、ちゃんと目を合わせて素直に話せていることに

すごい、なんか、感動した。

嬉しいなあって思った。

あの頃のふたりだったらきっと有り得ないことだろうなあって

私もとげとげしていたし、自分を守るのに必死だったし、

彼ももうちょっと、どうしたらいいのかわからなかったと思う。

 

なんか、こんなふうにとくべつに思うのは

きっと私だけなんやろうけど

こうやっていちいち大事にしていたり

ひとりでたからばこにたからものを集めていたり

そんな自分がおばかだなあって

なんだか愛おしくなっちゃう。

 

きっとこんなとくべつも

ほんとうにはとるにたらないもの。

それってとってもあんしんなこと。

 

思いが大きくなり過ぎるけど

それが私だから

誰とも比べずに

大事にしたいもの、大事にして

胸いっぱいになりながら

あんしんする。

 

 

 

 

グッドナイト グッドナイト ベイビー

涙こらえて

楽しい 明日を 夢見てグッドナイト